2011年04月19日
放射線を少し浴びると元気になるホメオパシー理論を事故に適用するな
某教授が、放射線を少し浴びるとDNA修復機構が働き、細胞が活性化されて元気になることをしきりに主張しています。
しかし、わたしは、このホメオパシーやホルミシスの機能を放射線事故に適用するのは明らかに間違ってると考えています。
まずDNAの破損の種類について簡単に説明します。
1本鎖切断は、1箇所DNAがアミノ酸が欠損した状態。簡単に修復できます。
2本鎖切断Aは、切れた場所が離れている場合です。これは個別に1本鎖切断が起こってるようなものなので、これも簡単に修復できます。
2本鎖切断Bは、切断箇所が近いために、DNAが2本に千切れてしまった状態です。これの修復には1日近くかかり、修復に失敗すると癌になったり、細胞死を引き起こします。
2本鎖切断Cは、切断面が複雑にえぐられてしまいDNAが2本に千切れてしまった状態です。放射線による切断の場合はこういった複雑な2本鎖切断も発生することがあるのが問題です。
日常生活でも水酸化物イオンなどのラジカルや紫外線でDNAの損傷は発生し、1つの細胞で1日に50000回程度の1本鎖の切断や、10回程度の2本鎖切断が起こるといわれています。
放射線の場合、低線量でも、高線量でも1本鎖切断と2本鎖切断の発生する割合には変化が無いことが分かっており、1本鎖切断の 1/6〜1/8程度が 2本鎖切断になることが分かっています。
つまり、低線量でも浴び続けると比例して発がんリスクが上がるという訳です。
それならば、中線量を分割して照射する放射線治療はどうなのか?ということですが、放射線を浴びた時にがんが発生するリスクとは別に、浴びすぎると、DNAの修復のために細胞が分裂を一時停止する線量と、これ以上浴びると細胞が死んでしまう線量があります。
癌細胞は分裂速度が速いのと同時に、DNA修復のために細胞分裂を一時的に停止する期間が長いので、一般の細胞がDNAの修復が終わったころにもう一度放射線を浴びせて、修復が完了していない癌細胞の細胞死を誘発するための技術で、修復失敗による癌化のリスクからは解放されるわけではありません。
分割照射で、細胞死、致死を避けることができますが、癌のリスクは総線量に比例すると考えています。
放射線抵抗性細菌におけるDNA損傷の修復 (09-02-01-08) - ATOMICA -
また、放射線が照射された箇所に同時多発的にDNA損傷が発生するのが、修復を困難にしています。(2本鎖が切れた場合、修復のために近くにある対DNAの情報を利用することがあります)
つまり、低線量でも修復困難な2本鎖切断が発生しやすく、周りのDNAの損傷を誘発することから、発癌リスクが上昇します。1本鎖切断のみであればほぼ確実に修復可能ですが、発癌リスクが同時多発的に発生するDNA損傷は体を元気にするどころか有害でしかないのです。
つまり、1時的に放射線浴びて、その後活性化するという理論は、継続して放射線を浴び続ける場合全く意をなさないのではないでしょうか?
ちなみに、DNA損傷が発生すると、修復期間中は細胞分裂を停止して、修復に専念します。ですから、活性化するどころか、活動を抑制する方向に働きます。
さらに突っ込んで理論展開してみましょう。
ホメオパシー説では少量の放射線をあらかじめ当てておくと、その後強い放射線を当てたときに、DNAの修復速度が向上したと言う理論や実験に基づいています。しかし、二本鎖切断の修復速度は上がっても、修復成功率自体は殆ど変わりません。
放射線と健康を考える会−すぽっとらいと
ちなみに、ソースを見ると、正常な細胞ではなく、人間のがん細胞に4時間前に放射線を当てておくと、1時間後のチミングリコール(DNAの損傷)の量が半分になったと言うものでした。線量にかかわらず、2本鎖切断のDNAの修復が完了するまでに実際4時間程度かかります。
4時間前に放射線を照射したということは、前回のDNA修復が完了するころを見計らってもう一度照射したと考えることも可能です。
すると、既に細胞は修復状態に入ってる訳ですから、いきなり放射線を照射した場合に比べて、修復フェーズに早く入ることができるのはごく当然の現象だと思います。
要するに分かりやすい例にすると、ラーメン屋さんで開業時間前に無理やりお客さんが1杯のラーメンを注文して、それが完成したころに4杯注文を受けるのと、開業直後準備がないところにいきなり4杯の注文を受けるのとどっちが速くラーメンができるか、最初の10分くらいの進捗状況を比べてこんなに差があるよ!と、で開業前にラーメンを注文しさえすれば一日中どの時間に来てもラーメンは普通よりも効率よく作れるという主張のむちゃくちゃな理論になります。(注:この論文が悪いのではなく、誇大解釈してるホメオパシー理論への批判です)
細胞の修復力が上がったと判断するのにはタイムスパンが短すぎて、その効果がどのくらい続いたのかも不明で、無理があるとおもいます。
そういう理論を元に、放射線浴びると元気になると主張してる訳なので私は否定します|・ω・)ノ
関連サイト:
案の定、由井寅子氏が放射能に対処するホメオパシーのレメディについて語りだしたらしい件 - Not so open-minded that our brains drop out.
稲 恭宏博士に対する武田邦彦氏の意見 | リアルワールド
稲 恭宏氏の決死の勇(下) - 心に青雲
めざまし政治ブログ(旧落選運動ブログ) : 稲 恭宏博士のインチキさと私たちの放射線過剰反応 (^_^;)
しかし、わたしは、このホメオパシーやホルミシスの機能を放射線事故に適用するのは明らかに間違ってると考えています。
まずDNAの破損の種類について簡単に説明します。
正常 | 一本鎖 切断 | 二本鎖 切断 A | 二本鎖 切断 B | 二本鎖 切断 C |
|-C G-| |-T A-| |-A T-| |-A T-| |-C G-| |-T A-| | |-C G-| |-T A-| |-A |-A T-| |-C G-| |-T A-| | |-C G-| A-| |-A T-||-A T-| |-C |-T A-| | |-C G-| |-T A-| T-| |-A |-C G-| |-T A-| | |-C G-| A-| |-C G-| |-T A-| |
2本鎖切断Aは、切れた場所が離れている場合です。これは個別に1本鎖切断が起こってるようなものなので、これも簡単に修復できます。
2本鎖切断Bは、切断箇所が近いために、DNAが2本に千切れてしまった状態です。これの修復には1日近くかかり、修復に失敗すると癌になったり、細胞死を引き起こします。
2本鎖切断Cは、切断面が複雑にえぐられてしまいDNAが2本に千切れてしまった状態です。放射線による切断の場合はこういった複雑な2本鎖切断も発生することがあるのが問題です。
日常生活でも水酸化物イオンなどのラジカルや紫外線でDNAの損傷は発生し、1つの細胞で1日に50000回程度の1本鎖の切断や、10回程度の2本鎖切断が起こるといわれています。
放射線の場合、低線量でも、高線量でも1本鎖切断と2本鎖切断の発生する割合には変化が無いことが分かっており、1本鎖切断の 1/6〜1/8程度が 2本鎖切断になることが分かっています。
つまり、低線量でも浴び続けると比例して発がんリスクが上がるという訳です。
それならば、中線量を分割して照射する放射線治療はどうなのか?ということですが、放射線を浴びた時にがんが発生するリスクとは別に、浴びすぎると、DNAの修復のために細胞が分裂を一時停止する線量と、これ以上浴びると細胞が死んでしまう線量があります。
癌細胞は分裂速度が速いのと同時に、DNA修復のために細胞分裂を一時的に停止する期間が長いので、一般の細胞がDNAの修復が終わったころにもう一度放射線を浴びせて、修復が完了していない癌細胞の細胞死を誘発するための技術で、修復失敗による癌化のリスクからは解放されるわけではありません。
分割照射で、細胞死、致死を避けることができますが、癌のリスクは総線量に比例すると考えています。
放射線抵抗性細菌におけるDNA損傷の修復 (09-02-01-08) - ATOMICA -
また、放射線が照射された箇所に同時多発的にDNA損傷が発生するのが、修復を困難にしています。(2本鎖が切れた場合、修復のために近くにある対DNAの情報を利用することがあります)
つまり、低線量でも修復困難な2本鎖切断が発生しやすく、周りのDNAの損傷を誘発することから、発癌リスクが上昇します。1本鎖切断のみであればほぼ確実に修復可能ですが、発癌リスクが同時多発的に発生するDNA損傷は体を元気にするどころか有害でしかないのです。
つまり、1時的に放射線浴びて、その後活性化するという理論は、継続して放射線を浴び続ける場合全く意をなさないのではないでしょうか?
ちなみに、DNA損傷が発生すると、修復期間中は細胞分裂を停止して、修復に専念します。ですから、活性化するどころか、活動を抑制する方向に働きます。
さらに突っ込んで理論展開してみましょう。
ホメオパシー説では少量の放射線をあらかじめ当てておくと、その後強い放射線を当てたときに、DNAの修復速度が向上したと言う理論や実験に基づいています。しかし、二本鎖切断の修復速度は上がっても、修復成功率自体は殆ど変わりません。
放射線と健康を考える会−すぽっとらいと
ちなみに、ソースを見ると、正常な細胞ではなく、人間のがん細胞に4時間前に放射線を当てておくと、1時間後のチミングリコール(DNAの損傷)の量が半分になったと言うものでした。線量にかかわらず、2本鎖切断のDNAの修復が完了するまでに実際4時間程度かかります。
4時間前に放射線を照射したということは、前回のDNA修復が完了するころを見計らってもう一度照射したと考えることも可能です。
すると、既に細胞は修復状態に入ってる訳ですから、いきなり放射線を照射した場合に比べて、修復フェーズに早く入ることができるのはごく当然の現象だと思います。
要するに分かりやすい例にすると、ラーメン屋さんで開業時間前に無理やりお客さんが1杯のラーメンを注文して、それが完成したころに4杯注文を受けるのと、開業直後準備がないところにいきなり4杯の注文を受けるのとどっちが速くラーメンができるか、最初の10分くらいの進捗状況を比べてこんなに差があるよ!と、で開業前にラーメンを注文しさえすれば一日中どの時間に来てもラーメンは普通よりも効率よく作れるという主張のむちゃくちゃな理論になります。(注:この論文が悪いのではなく、誇大解釈してるホメオパシー理論への批判です)
細胞の修復力が上がったと判断するのにはタイムスパンが短すぎて、その効果がどのくらい続いたのかも不明で、無理があるとおもいます。
そういう理論を元に、放射線浴びると元気になると主張してる訳なので私は否定します|・ω・)ノ
関連サイト:
案の定、由井寅子氏が放射能に対処するホメオパシーのレメディについて語りだしたらしい件 - Not so open-minded that our brains drop out.
稲 恭宏博士に対する武田邦彦氏の意見 | リアルワールド
稲 恭宏氏の決死の勇(下) - 心に青雲
めざまし政治ブログ(旧落選運動ブログ) : 稲 恭宏博士のインチキさと私たちの放射線過剰反応 (^_^;)